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清算条項付一七条決定の注意点

「申立人および相手方の間には、一切の債権債務がない」という調停条項が定められることがある。計算された過払金が少額であるため過払金返還請求をするまでもないと判断して、清算条項を定め事件を終了させることを目的する場合である。ただし、現在、清算条項を付ける一七条決定は少なくなっている。債権者が金銭消費貸借について、抵当権または根抵当権など不動産担保を設定している場合に、債務者が債務返済に窮し、特定調停の申立てをすると、債権者は抵当権または根抵当権の優先弁済権を主張して、債務の減額や将来利息の免除に応じないことが多くある。

しかし、特定調停は多重債務者の経済的更生を目的とするものであり、不動産の担保の有無によって解決方法が変更するものではない。よって、不動産の担保がある場合においても、不動産の担保がない債務と同様に、取引開始時点からのすべての取引履歴に基づき、利息制限法所定の制限利息によって元本充当計算を行い、残元本に将来利息を付けない長期分割弁済での交渉をする。結果として、不動産担保がある場合においても、無担保同様の特定調停が成立しているケースが多い。また、不動産担保がある場合は、申立人が残債務を全額弁済したときには、相手方は不動産担保抹消登記に応じるという条項が必要である。連帯保証人がおり、不動産担保がある場合の一七条決定記載例を掲載する。

一七条決定は、実質的には裁判所による最終的な調停解決案の提示といえるが、裁判所と当事者との公平を保つため、当事者の異議申立ての制度を設置することにより、当事者間に一七条決定を受け入れるかどうかの選択権を残している。一七条決定が発令された場合、当事者または利害関係人は、一七条決定の内容に不服があるときには、異議の申立てをすることができる。利害関係人は、調停に参加しているといないとを問わない。利害関係人としては連帯保証人、債務承継人などが考えられる。一七条決定に対する異議申立ては、当事者である申立人または利害関係人が一七条決定の告知を受けた日から二週間以内にする必要がある。

この期間の計算方法は、初日不算入で、期間の末日が祭日その他の休日に当たるときは、その翌日に期間は満了する(民一四〇条、民訴九五条一項・三項)。異議の申立ては、規則上、書面または口頭のいずれの方法によってもできるとされているが、通常、書面により異議申立てがされている。異議申立てには理由は不要である。異議の申立てがあった場合、一七条決定の効力は無条件で直ちに絶対的に効力を失う。その異議に実質的な理由があるかどうか等その内容のいかんを問わない。異議の申立てがなかった場合、一七条決定は、裁判上の和解と同一の効力を有する。

一七条決定後の流れとは

(1)意義
民事調停法において以下のとおり定めている。「裁判所は、調停委員会の調停が成立する見込みがない場合において相当であると認めるときは、当該調停委員会を組織する民事調停委員の意見を聴き、当事者双方のために衡平に考慮し、一切の事情を見て、職権で、当事者双方の申立ての趣旨に反しない限度で、事件の解決のために必要な決定をすることができる。この決定においては、金銭の支払、物の引渡しその他の財産上の給付を命ずることができる」(一七条)。すなわち、調停に代わる決定は、当事者一方の頑固な意思により、またはわずかな意見の相違によって、調停が不成立に終わり、調停手続きが徒労に終わることを避けるためにできた制度である。調停が成立する見込みがない場合において、裁判所が、調停の解決のために必要な決定をすることができることを認めている。裁判所が一七条決定を発令をする際、必ず調停委員会を組織する民事調停委員の意見を聴取する。特定調停においては、調停成立事案とほぼ同数の一七条決定が発令されている。

(2)一七条決定の要件
1 調停成立の見込みがないこと
当事者間に合意が成立する見込みがない場合、もしくは成立した合意が相当でない場合で、相当性のある合意が期待できない場合である。

2 決定内容が「公正かつ妥当で経済的合理性を有する」ものであること(特定調停一五条)
特定債務者の経済的制裁に資するという観点から、当事者双方にとって経済的に合理的であることが求められる。例えば、債権者にとれば、債務者が破産に至るよりも、譲歩して合意する方が有利である場合もある。また、債務者にとっても担保権者と一般債権者の間に優劣をつけることもあろう。例えば、相手方である債権者が出頭しないため、話し合いにより互譲を求める余地がない場合などがこれに当たる。実務では、調停委員が相手方に電話による事情聴取をし、一七条決定の内容を相手方が承諾した後に、裁判所が一七条決定を発令する場合がほとんどである。

3 債務を分割弁済する場合の一七条決定
残債務を分割弁済するという特定調停が成立した場合の調停調書と同様の内容の一七条決定が発令される。残債務が、取引当初からの履歴が開示された上で利息制限法に基づく再計算されたものであるかどうか確認する必要がある。

4 残債務がない場合の一七条決定
特定調停では、申立人から相手方への債務が存在しないことが判明した場合、「申立人の相手方に対する債務は存在しない」という調停、または一七条決定が成立する場合が多い。

利息制限法による再計算の必要性

(1)注意点
特定調停手続きは、主に調停委員が相手方との交渉や調停成立案の提示をするが、申立人は調停で提出された取引履歴の内容や利息制限法に基づく再計算結果を確認することが必要である。

(2)利息制限法による再計算
すでに説明したとおり、相手方の提出した約定の残債務は、通常利息制限法以上の利息契約によるものであり、利息制限法の制限利率(一〇万円未満・年利二〇%、一〇万円以上一〇〇万円未満・年利一八%、一〇〇万円以上・年利一五%)に基づいて債権残高を再計算する。利息制限法の制限利率を超えた利息は無効であるため、正しい債権額を確認するために無効の利息を元金に算入して利息制限法に基づく再計算をする必要があるからである。

(3)裁判所、調停委員の権限
特定調停の申立てがあった場合、特定調停法においては、裁判所や調停委員に事件に関係する書類の提出を求める権限が認められているため、実務では裁判所書記官・調停委員から直接業者に対して、取引履歴の開示を求めることになる。

(4)文書提出命令の申立て
1 文書提出命令を必要とする場合
調停委員会は、特定調停のために特に必要があると認めるときは、当事者または参加人に対して事件に関係する文書または物件の提出を求めることができる(特定調停一二条)。特定調停においては、関係権利者は、証拠書類を提出しなければならない(特定調停規四条)が、取引履歴を一部しか開示しない等、証拠書類提出に応じない場合には特定調停法コー条「特に必要があると認めるとき」に該当し、文書提出命令の申立てまたは職権での発令をすることができる。

2 申立人・申立書
文書提出命令の申立ては、特定調停申立てと同時もしくは申立て後速やかに、特定債務者が申立人となって行うものであるが、調停委員会が職権で発令することもできる。

3 文書提出命令を求める文書
債務弁済に関する特定調停の場合は、債権者債務者間の契約書、取引明細などが特定調停法二一条「事件に関係のある文書」に該当する。

4 文書提出命令の理由
文書提出命令申立てには理由の記載が必要である。例えば、「相手方は、申立人の再三の取引履歴開示請求にもかかわらず、一向にこれに応じない。よって、調停委員会より発令するよう求める」等、具体的に開示を求めたが相手方が協力しなかった経緯などを記載する。

5 文書提出命令発令と強制力
通常、貸金業者は、ほとんどの場合取引履歴を開示しているが、全部または一部の取引履歴の開示に応じない場合もある。特定調停法二四条において、「当事者又は参加人が正当な理由なく第二一条の規定による文書又は物件の提出の要求に応じないときは、裁判所は、十万円以下の過料に処する」と規定されており、取引履歴の開示に応じなかった業者に対し、文書提出命令により文書開示を求めると、業者は過料の制裁を逃れるために開示に応じることが多くあり、特定調停を優位に進めることができる。

6 文書提出命令に応じない業者への対策
貸金業者は貸金業法一九条の二の規定により、当然に文書の提出が必要とされている。文書提出命令が発令されたにもかかわらず、文書提出に応じない業者に対しては監督官庁への連絡や行政処分の申立てなども検討すべきであろう。

特定調停の成立とは

当事者双方が、調停委員会から提示された調停条項案に合意した場合、特定調停は成立する。調停条項案の内容は「特定債務者の経済的再生に資するとの観点から、公正かつ妥当で経済的合理性を有する内容のものでなければならない」(特定調停一七条二項)とされている。例えば、特定債務者の返済能力を超えた返済計画を立てることは認められていない。特定調停においては、①利息制限法による再計算、②将来利息、遅延損害金カット、③長期分割払い、を原則とし、裁判所が返済計画案を調停成立目安として作成し、これを裁判所から申立人・相手方に提案した上で双方が合意をする方法がとられている。

裁判所は、調停が成立する見込みがない場合において、相当であると認めるときは、事件解決のために必要な決定をすることができる。これを調停に代わる決定といい、通常、一七条決定と呼ばれている。現在、全国の簡易裁判所で行われている特定調停手続きにおいては、裁判所の返済計画案に相手方が同意しない場合や相手方である債権者が欠席する場合に、一七条決定が多く利用されている。調停が成立したときは調停調書に記載される。調停調書は裁判上の和解と同一の効力を有する。よって、調停調書は債務名義として執行力をもち、例えば調停条項に特定の給付条項があった場合、強制執行が可能となる。

調停委員会が提示した調停案に対して、相手方が反対して合意ができない場合、一七条決定が発令された以外は、調停は不成立となる。特定調停では、多数の債権者のうち、一部の債権者とは合意をして調停成立し、一部の債権者は特定債務者の生活再建に非協力的な態度をとったために調停不成立となる場合もある。相手方との調停が成立せず、やむを得ず調停を取り下げることもあるが、調停を取下げした場合、調停は最初からなかったものとして扱われる。債権者は改めて債務者に請求を再開することになるので対処法をあらかじめ準備するなど注意が必要である。

第二回期日における特定債務者の注意点とは

第二回期日には、特定債務者および相手方を呼び出し、第一回期日において算出した弁済可能金額により、具体的な返済計画を立てて、調停委員から調停条項案の提案を申立人および相手方に対し行う。特定調停は、第二回目以降に調停案が提示され、合意に至った場合に調停成立することになる。調停調書、一七条決定は、債務名義となるため、提示された調停案について、申立人に返済能力があるかどうかの見極めが大切である。

第二回期日までに、相手方から取引履歴が提出されていることが多いが、相手方から提出された取引履歴が取引の途中からのものであったり、また、調停委員による利息制限法に基づく再計算が行われていないことがある。そのため、申立人は調停で提出された取引履歴が取引当初から提出されているかどうか、利息制限法に基づく計算が途中で遅延損害金を加算されているなど不当な計算方法になっていないかどうか、再計算結果を確認することが必要である。

当然ながら、相手方の取引履歴が取引当初から開示されたものではない場合、また、利息制限法による再計算がされていなかった場合には、調停委員にその旨を申し出て、取引当初にさかのぼって取引履歴を相手方から開示させた上で、利息制限法による再計算をし、正しい調停を行うよう促すことが必要である。最近の特定調停では、あらかじめ取引履歴を債務者が取り寄せ、本人による再計算を行った上で、調停案を提示して、調停に臨む申立人も増えている。この方法によれば、取引履歴が簡裁に開示されているかどうか、疑心暗鬼になることはない。また、申立人主導の調停を進めることができるため、取引履歴をあらかじめ取り寄せておくことは利点が多いといえるだろう。

調停前措置命令の申立方法

この手続きを利用するメリットとしては、保証金が不要、つまり無担保での発令が可能であることがあげられる。例えば、従前、商工ローン問題で債務者が振り出した手形や小切手の呈示を止めるために「処分禁止の仮処分手続き」が多用されていた。しかし、通常手形額面の一〇%から二〇%の保証金が必要となり、例えば額面一千万円の手形を振り出している場合には一〇〇万円から二〇〇万円の保証金が必要となるため、これら保証金の調達が困難な特定債務者がほとんどであった。これに対し、特定調停では、調停前の措置命令が発令される際に保証金は不要である。

(1)申立書・添付書面
特定調停申立てと調停前の措置申立ては同時に申立てをすることになる。次頁に、調停前の措置命令申立書を掲載する。

(2)関係当事者への審尋
調停委員会は、調停前の措置命令発令の必要性を判断するために申立人の審尋を行う。相手方については簡易裁判所の判断で行うこともできるが、実施することはごく稀である。

(3)不服申立て
調停前の措置命令に対して、相手方その他の事件の関係人は不服申立てをすることができない。一方、調停前の措置の申立てを却下した処分に対して、申立人は不服申立てができない。

(4)過料による制裁
調停前の措置命令が発令された際、相手方が正当な理由なく調停前の措置に従わない場合には、金一〇万円以下の過料に処することができる(民調三五条)。

調停前の措置申立てが必要となる場合

民事調停法一二条は、「調停委員会は、調停のために特に必要があると認めるときは、当事者の申立により、調停前の措置として、相手方その他の事件の関係人に対して、現状の変更又は物の処分の禁止その他調停の内容たる事項の実現を不能にし又は著しく困難ならしめる行為の排除を命ずることができる」と定めている。調停前の措置とは、調停委員会が、当事者の申立てから調停が終了するまでの間、仮の措置として相手方その他事件の関係人に対して命ずることができる、調停成立に必要と認められる保全的措置のことをいう。

調停前の措置は、民事保全法における仮処分のように債務名義となるものではなく執行力がない。よって相手方に強い拘束力をもつことはなく、調停前の措置命令を債務名義として、命令内容の実現を強制することはできず、相手方がこれに従わない可能性もあるが、実務上はほとんどの業者がこれに従っている。また、参加人以外に強制手段がなく、利害関係人に対して調停前の措置命令が発せられたとしても、参加人ではない利害関係人には何らの強制手段も用意されていないという点には注意が必要である。調停前の措置発令後は、有担保の債権者も無担保である債権者の特定調停と同じ取扱いで進めることになる。

商工ローン業者が手形を担保として保持している場合、業者が手形を取立てに回すということになれば、申立人において手形不渡りを免れることができず、事業の倒産にかかわることがある。よって、手形の不渡りを止める手続きとして、「相手方は、上記当事者間の御庁平成○年(特ノ)第○○号特定調停事件が終了するまで、別紙約束手形目録記載の約束手形を支払場所に呈示して権利を行使し、または裏書譲渡その他一切の処分をしてはならない。第三債務者は、別紙約束手形目録記載の約束手形に基づき、相手方に対して支払いをしてはならない」とする調停前の措置命令が必要となる。

調停前の措置命令は、手形の処分禁止の仮処分手続きと同様の効果を無担保で得ることが可能である。調停の事前措置が一般的になったことにより、手形をとっている業者の中でも、代理人からの申出のみで、業者が手形の返却に応じるケースも増えている。このような労力をかけない手形返却が可能となるためにも、簡裁での取扱いを定着させることが必要である。また、手形の処分禁止に限らず、調停の成立およびその執行を保全するために必要な行為であれば、あらゆる命令が発令される可能性がある。

よって、担保が必要となる民事調停規則六条による民事執行停止申立てにおいて保証金の準備ができない場合の補完的対応策として利用することが可能である。調停前の措置命令は、以前はあまり利用されているとはいえない状態であったが、調停内で紛争の解決を図るという趣旨から、商工ローン問題で債務者が振り出した手形や小切手の呈示を無担保で止めることができるようになり、次第に調停前の措置命令を利用する人が増えてきている。

民事執行手続きの申立方法

(1)申立書・添付書面
特定調停申立てと同時、もしくは特定調停申立後直ちに、民事執行停止の必要性を証明するため、次の事項を明らかにする書類を提出して申立てをする(特定調停規三条)。

1 民事執行手続きのために提出する書類
①「当該民事執行の手続の基礎となっている債権または担保権の内容」
判決・公正証書などの債務名義などがこれに当たる。
②「前号の担保権によって担保される債権の内容」
登記事項証明書、金銭消費貸借契約書などがこれに当たる。
③「当該民事執行の手続の進行状況」
差押命令正本、執行裁判所からの通知書などがこれに当たる。
④「特定債務者の調整に関する関係権利者の意向」
差押債権者の分割弁済案に対する考え方などがこれに当たる。
⑤「調停が成立する見込み」
家計簿、金銭出納帳、陳述書などがこれに当たる。

2 強制執行停止決定申立書記載例を掲載する。申立書には、強制執行の停止を求めること、また、その理由につき記載する。

(2)関係当事者への審尋
特定調停の係属する裁判所は、民事執行停止の申立てがあった場合において、必要があると認めるときは、当該民事執行の申立てをしている関係権利者を面談によって聴き取り調査をする(特定調停規三条二項)。これは、民事執行の手続きの停止を命ずることが適当かどうか、担保が必要かどうかなどを検討するためである。無担保での強制執行停止決定が発令された場合の記載例を掲載する。

(3)民事執行手続きの停止期間
民事執行手続きの停止期間は特定調停が終了するまでの間とされている。特定調停が終了または不調となった場合には、民事執行停止手続きも終了し、執行停止手続きの効力も終了する。

(4)民事執行停止申立てをするにあたっての注意点
民事執行停止命令が発令された場合には、代理人から決定書を直接相手方に送付して和解交渉を優位に進める努力が必要である。通常、大手貸金業者の場合は、裁判所の命令を無視して給料差押えを継続することはほとんどない。例えば、代理人が任意整理手続きをする場合に、債権者が強制執行をしてきたとき、特定調停申立てをし、民事執行停止の申立てをした上で、代理人が債権者と任意整理手続きを行うことも、債務整理手段として有効である。

特定調停実務の具体例

(1)無担保での執行停止
特定調停の申立てをする特定債務者は、通常、生活費、事業資金において、担保を積む余力が残っていない場合がほとんどである。そこで、特定調停法では、執行停止申立規定の中に、「申立てにより、特定調停が終了するまでの間、担保を立てさせて、又は立てさせないで」民事執行の手続きの停止を命ずることができる、として、特定調停においては、無担保で執行停止ができる規定を設置した(特定調停七条)。

特定調停実務でも、ほとんどが無担保や保証金なしでの執行停止決定がされている。特定調停法七条では原則として、保全処分における担保と同様に、担保を立てることを平行して規定しているが、特定調停では特定債務者の経済的再生を考慮して、ほとんどの場合に無担保による民事執行停止を認めていることは、従来の執行停止手続きからみて画期的といっていいだろう。

(2)民事執行の停止を命ずることができる場合
特定調停法では、民事調停規則において認められていた民事執行停止手続きの要件を緩やかにしている(特定調停七条)。

①「事件を特定調停によって解決することが相当であると認める場合」
特定債務者の債務状況、収入から判断し、特定調停により経済的に立ち直ることが十分可能であると判断できる場合には、執行停止決定が発令される可能性が大きい。ただし、仮に執行停止をしたとしても調停成立が見込まれない場合には、執行停止決定が下されることはない。

②「特定調停の成立を不能にし若しくは著しく困難にするおそれがあるとき」
債権者が強制執行を行うことにより、債務者の生活基盤、事業基盤が脅かされるおそれがあり、民事執行手続きの停止を認めることが調停成立に必要とされる場合には、執行停止決定がされる可能性が大きい。とりわけ、生活や事業の拠点である住居が強制執行された場合には、調停の目的である債務弁済そのものが困難となるため、これら不動産に対する強制執行の停止をすることが可能である。

③「特定調停の円滑な進行を妨げるおそれがあるとき」
債権者が、債務弁済調停に応じず、債権回収のために強制執行するという強行な姿勢に出た場合、すなわち、調停の進行そのものが妨害される場合には執行停止決定が可能である。

民事執行停止手続きとは

【民事執行停止手続きが必要となる場合】
特定調停において、債権者の債権回収を無制限に認めた場合、特定調停の弁済計画を立てることはできない。そこで、特定調停では、債権者が特定調停中に強制執行ができないよう規定を設置した。これが、民事執行停止手続きの規定である(特定調停七条)。すなわち、「特定調停に係る事件の係属する裁判所は、事件を特定調停によって解決することが相当であると認める場合において、特定調停の成立を不能にし若しくは著しく困難にするおそれがあるとき、又は特定調停の円滑な進行を妨げるおそれがあるときは、申立てにより、特定調停が終了するまでの間、担保を立てさせて、又は立てさせないで、特定調停の目的となった権利に関する民事執行の手続の停止を命ずることができる」と規定している。

民事執行停止手続きが必要となるのは、例えば、強制執行認諾付公正証書により金銭消費貸借契約を交わしているケースである。この場合、債権者が公正証書により給料差押手続きをすることがある。債務者が給料差押えを受けることは、勤務先への信用問題となり、解雇にもなりかねない重大問題であり、特定調停中に給料差押えがあるとすれば、債務弁済計画を立てることが困難となる。

また、特定調停では債権者平等の原則から、全債権者に平等に一定割合での弁済が求められるが、特定の債権者の給料差押えを継続的に許すことになれば、債権者の平等が害されることになり、返済計画そのものを成立させることができない。そこで、以上のような公正証書による給料差押えがされている場合には、特定調停法七条の民事執行手続きの停止手続きを利用して、強制執行を無担保で停止させることも可能となる。なお、民事執行停止の中立てには、同法七条に定める民事執行停止の必要性、特定調停による解決可能性について十分な疎明資料が必要となる。

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