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利息制限法による再計算の必要性

(1)注意点
特定調停手続きは、主に調停委員が相手方との交渉や調停成立案の提示をするが、申立人は調停で提出された取引履歴の内容や利息制限法に基づく再計算結果を確認することが必要である。

(2)利息制限法による再計算
すでに説明したとおり、相手方の提出した約定の残債務は、通常利息制限法以上の利息契約によるものであり、利息制限法の制限利率(一〇万円未満・年利二〇%、一〇万円以上一〇〇万円未満・年利一八%、一〇〇万円以上・年利一五%)に基づいて債権残高を再計算する。利息制限法の制限利率を超えた利息は無効であるため、正しい債権額を確認するために無効の利息を元金に算入して利息制限法に基づく再計算をする必要があるからである。

(3)裁判所、調停委員の権限
特定調停の申立てがあった場合、特定調停法においては、裁判所や調停委員に事件に関係する書類の提出を求める権限が認められているため、実務では裁判所書記官・調停委員から直接業者に対して、取引履歴の開示を求めることになる。

(4)文書提出命令の申立て
1 文書提出命令を必要とする場合
調停委員会は、特定調停のために特に必要があると認めるときは、当事者または参加人に対して事件に関係する文書または物件の提出を求めることができる(特定調停一二条)。特定調停においては、関係権利者は、証拠書類を提出しなければならない(特定調停規四条)が、取引履歴を一部しか開示しない等、証拠書類提出に応じない場合には特定調停法コー条「特に必要があると認めるとき」に該当し、文書提出命令の申立てまたは職権での発令をすることができる。

2 申立人・申立書
文書提出命令の申立ては、特定調停申立てと同時もしくは申立て後速やかに、特定債務者が申立人となって行うものであるが、調停委員会が職権で発令することもできる。

3 文書提出命令を求める文書
債務弁済に関する特定調停の場合は、債権者債務者間の契約書、取引明細などが特定調停法二一条「事件に関係のある文書」に該当する。

4 文書提出命令の理由
文書提出命令申立てには理由の記載が必要である。例えば、「相手方は、申立人の再三の取引履歴開示請求にもかかわらず、一向にこれに応じない。よって、調停委員会より発令するよう求める」等、具体的に開示を求めたが相手方が協力しなかった経緯などを記載する。

5 文書提出命令発令と強制力
通常、貸金業者は、ほとんどの場合取引履歴を開示しているが、全部または一部の取引履歴の開示に応じない場合もある。特定調停法二四条において、「当事者又は参加人が正当な理由なく第二一条の規定による文書又は物件の提出の要求に応じないときは、裁判所は、十万円以下の過料に処する」と規定されており、取引履歴の開示に応じなかった業者に対し、文書提出命令により文書開示を求めると、業者は過料の制裁を逃れるために開示に応じることが多くあり、特定調停を優位に進めることができる。

6 文書提出命令に応じない業者への対策
貸金業者は貸金業法一九条の二の規定により、当然に文書の提出が必要とされている。文書提出命令が発令されたにもかかわらず、文書提出に応じない業者に対しては監督官庁への連絡や行政処分の申立てなども検討すべきであろう。