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特定調停成立に瑕疵がある場合の争い方

特定調停の際に、相手方が開示した取引履歴が取引途中であり、その不十分な取引履歴を利息制限法に基づき再計算したため、債務が残るとする調停が成立している場合がある。このとき、本来の取引開始日から始まるすべての取引履歴を利息制限法に基づき再計算をすると、過払金が生じる場合がある。このような特定調停成立に瑕疵がある場合については後述する対応が必要となる。

(1)通常の過払訴訟手続きを行う場合
前述の事例の場合、債権者債務者の間において、本来の取引開始日から、特定調停の際に提出された取引履歴の開始日までの期間については、当該特定調停において判断されていないため、実際の取引開始日からの全取引に基づいた過払金返還訴訟をすることが可能である。訴状の中の請求の趣旨については通常の過払金返還請求訴訟と変わらない。実務的には、訴訟提起をする前に、相手方貸金業者と過払金返還の交渉をし、過払金返還となれば事件は終了だが、交渉が決裂するなど貸金業者が過払金返還に応じない場合は過払金返還請求を目的とする一般調停申立てをしたり、過払金返還請求訴訟を提起することになる。この場合、特に調停調書や一七条決定の錯誤無効は、原告から主張する必要はない。なぜなら、相手方が、調停調書や一七条決定の効力について争わなければ、あえて裁判上で争点とする必要がないためである。

(2)特定調停の錯誤無効について争う場合
特定調停の錯誤無効を争う場合、貸金業者によっては、金銭消費貸借契約そのものが、すでに特定調停により確定しているのであるから、特定調停の既判力により、過払請求は認められないと主張してくるようなケースもある。例えば、原告主張の貸付けのうち特定調停の際に判断された一部の貸金について、原告である債務者が残債務の支払義務を認め、かつ、当事者双方に「その他に債権債務がないことを相互に確認する」という特定調停が成立している場合、貸金業者である被告が、原告の不当利得返還請求が当該調停に抵触するとして、特定調停の既判力を主張する場合などである。この場合、原告となる債務者は、調停における既判力は制限的であるとして、当該特定調停が要素の錯誤により無効であるとして争うことが一般的である。